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ビジネス関連の授業自体をロールプレイにした話

先日ビジネス会話を担当したときのスライドを公開しました。ずいぶん昔に担当したクラスですが、その時はその時でいろいろ一生懸命考えていたというのを思い出しました。そのことの関するブログはこちらです。

それで思い出したんですが、実はこのビジネス会話の前の年に、ビジネス会話ではないですがビジネスと関係があるクラスを担当しました。それは、ビジネスプレゼンと言うクラスです。そしてそのクラスをどのように進めて行こうかと考えている時に、ひとつのことを思い出したんですね。それは、その時たまたま教えに行っていた日系企業で働いている日本人会社員からの言葉です。

ある会社員
ある会社員

そうやって熱心に教えてくれる日本語の先生ってほんとに素晴らしいけど、学生ってみんな、日本人、みんながみんな熱心でフレンドリー、その上親切なんだって思ってない?

結構この発言はショックでした。

私は日本語を楽しく、そして使えるようになるために授業していましたし、そのためには楽しくリラックスできる雰囲気を作り、みんなで気兼ねなく話す練習ができるクラスを目指しました。なので、彼のその発言は非常に私の中では新鮮だったんですね。

クラス自体をロールプレイに

そのビジネスプレゼンを履修するのは大学4年生で、大学を卒業したら中には日系企業で日本人と働くことになる学生もいるかもしれません。そんな彼らが、台湾人とのコミュニケーションに慣れていない日本人と働くために何か練習できるクラスにできないか、、、そこで思いついたのがこれです。

私

その学期に担当するビジネスプレゼンテーションというクラス自体をロールプレイにしてしまおう。

私は会社員で学生の上司、そして学生たちは私の部下として授業に参加する、そして会社のために必要なプレゼンテーションを準備していくと言うロールプレイです。そして自分の役割は、いつもの自分とまったく違う「厳しい、細かい、笑わない」と言う上司という設定にしてみました。これから、どんな授業をするのか、これから1年間生徒たちに何を学んでもらいたいのか、この授業の意図は何なのかということを1回目のオリエンテーションで話しました。その時は確か学生たちは面白いこと言う先生だなと言う顔で私を見ていたような気がします。それが徐々に変わってきます。

どんな授業だったのかというと、、

私は毎回スーツをびしっと決めて教室に入ります。教室に入って誰も私に挨拶しないと、ここは挨拶をする必要のない部署なんですか?と嫌味たらしい言い方をします。そうすると言っている意味が分かる学生とわからない学生が出てくるんですよね。分かる学生が慌てて、おはようございますと言うとわかっていなかった学生も慌てて挨拶をするわけです。(実は日系企業で教えている時、そこの学生から婉曲的な指示や嫌味などについて全く習ってこなかったというの聞いたのも、この授業をしようと思った理由です。)説明も基本的に一回説明してそれで終わり、そこで質問がないか確認して、その後で質問してきた学生には「質問がないか聞きましたよね」なんてネチネチとした言い方をしたりしました。
それ以外にも、課題を遅れて出してきた学生が私に課題を提出する時に

私

これは何ですか

学生
学生

課題です

私

くぁwせdrftgyふじこlp

なんていうやりとりもありました。(ほら、ここで聞いているのは、それが何かではなくて、遅れた意味とかじゃないですか)

正直台湾人の中にも厳しい先生もいるだろうから、すぐ対応してくると思ったのですが、意外に対応は難しかったようです。後で誰かに聞いたのは、台湾人の厳しい先生の場合、下向いて静かにしていれば、それでオッケー的なところがあるみたいで、その時の私のように追及してくるような人はあまりいないと言う話でした。

効果は感じていたが、、

授業していくうちに、学生の状況判断、考える力、もちろんプレゼンする能力は目に見えて上がっていたと思います。ただまあウケは悪かったみたいです。学期末のアンケートには本当にボロボロに書かれました。(自分でよくできたって思ったのに学生からの評価はボロボロだったっていうのは、この時ぐらいです。)学期の一番最後ににこっと笑って「皆さん素晴らしかったです。皆さんこれからも頑張ってくださいね」ってフレンドリーモードで話しましたが、学生が見せたのは安堵した表情ではなく、思いっきり困惑した表情でした。そのクラス確か学生は25人ぐらいいたんですが、数人の学生にはものすごく感謝されました。残りの学生はどう考えていたかを後でその生徒たちに聞いてみたんですが、ひたすらに怖かったという意見が多く、中には私が学生たちを嫌っていると思っている学生もいたようです。嫌いなんてとんでもない話で、その当時一番気合を入れて準備していたのはその授業でしたし、その成果はすごく感じていました。でも、それも仕方がないのかなと終わってみて感じたのを覚えています。

何しろ10年以上前の話なので、あまり覚えていないことも多いのですが、(振り返りを書いておくって大切ですよ(^^;;)、やっぱりやりすぎたんですかね。次の年に担当したビジネス会話ではロールプレイと説明を切り分けてロールプレイでは厳しいふりをしても、説明のときにはいつもと同じようにという感じで授業をしました。学生からの評価もよかったですし、それでも十分学生たちは日本の会社で働く際、気をつけることを学べたような気がします。ただ、このビジネスプレゼンの授業での緊張感というんでしょうか、授業中一人一人が必死に思考を巡らせているという感じではなかったです。

そのビジネスプレゼンの授業ですが、学生たちにとってハードルが高すぎたのかもしれません。海外で働く日本語教師は異文化理解力高い人も多く(別に国内で、、がどうとかいうことはないですよ)、台湾に住み、台湾の機関で働いているということもあるので台湾に合わせようとする人が多いと思います。でも、出向してくる日本人会社員は違います。私はギャップを埋めようと思ったんだと思います、その当時は。でも今から思うと学生は日本で働く日本人をイメージしなければならなかったと同時に、会社で働く自分もイメージしなければならなく、それこそ無茶ぶりだったのかなと反省しています。とはいえ、大学4年生である彼らが、卒業後日本語がわかる人材として日系企業などで日本人と働くならば、必要な経験だとも思います。ここまで書いていて、何となく単純に一つのクラスで解決できることじゃなさそうな気がしてきました。

まあ、今後ビジネス会話などを教えることはないとは思うのですが(え?人生何が起こるかわからないって?)、もしビジネス会話を教えている方がいらっしゃったら、ご意見伺いたいです。

コーヒー一杯分のご支援を

ご支援いただけると様々なICTによる実験が捗ったり、生徒たちのお菓子が増えたりします。😃

日本語教育
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