学ぶための選択肢を増やして、生徒が自分に合う方法を見つけていく
最強の教えかたを目指すんだ!!
お恥ずかしい話ですが、いつか自分の教え方を突き詰めていけば、最強の教え方にたどり着き、その後はそんなに準備しなくても良くなる日が来るなんて妄想したこともありました。いい導入方法、ある程度の幅を持たした練習教材などなど、きちんと準備していけば一つの教科書のみで初級のクラスはもう十分だと。ほんと若気の至りですねぇ。
その時に見えていたのは、きっと生徒が日本語の学習にかけられる時間の差やモチベーションぐらいだったのでしょう(それすらも怪しいですが)。それ以外の違いを認識していなかったのだと思います。でも生徒の違いは本当に多岐に渡ります。勉強にかけられる時間数以外に、モチベーションを始め、それまでのインプット量、学習ストラテジーの有無、耳の良さ、目の良さ、論理的思考力、それまでの学習バックグラウンド、先生との相性の良さ、学習習慣、生活で抱えている問題などなど、様々な因数が学習に関わってきます。自分が一番いい方法だと思っていたやり方でも、ある一部の生徒にとっては最適な方法ではなかったというそんな当たり前のことに気がついたのは、割と最近のことです。とは言っても、もちろん生徒一人一人に合わせた準備など到底できません。でも、完全には無理でも、できるだけ選択肢を持たせられないかというのが、私のここ何年かの取り組みです。
単語を覚えること一つとっても学びかたはいろいろある
例えば単語を覚えるということで考えてみましょうか。耳で学ぶのが得意な生徒と目で学ぶのが得意な生徒、一人で学ぶのがうまい生徒とペアになって練習した方が効率のいい生徒、効率のいい学習方法を知っている生徒とそうでない生徒。単調なことを繰り返すことができる生徒とそうでない生徒など、いろんな生徒がいます。中には教科書の単語を眺めているだけで覚えてしまう生徒もいますが、そうでない生徒がほとんどです。そうなんです。単語を覚えるということ一つを取っても、学びかたは山ほどあるのです。では、それに対し自分は何をしてきたんだろうというのが自分の反省でした。生徒は中学生、まだ自分に合った学びかたを知らずにいる生徒は多いです。それからはできるだけ、多くの選択肢を生徒たちに提供できるようにしています。
その時に必要になるのは、どんなものでしょうか。紙と鉛筆でもなんとかなるかもしれませんが、私はやはりICTの力を借ります。Quizletで練習して、Wordwallで確認する生徒。ひたすらWordwallの試験を繰り返す生徒や、友達とQuizletのマッチで競争し合う生徒。Quizizzの問題で何回も聴きながら選択問題を解くことで覚えていく生徒、絵のカードを使ってイメージで覚えていく生徒、先生に紙をもらって何回も書くことで覚える生徒などなど。ICTの強みは様々な種類の学ぶ方法を簡単に増やすことができるということです。もちろん最終的には自分にあった学びかたを知り、自分でQuizletの単語表やQuizizzの問題を作って練習するようになったり、単語カードや友達とのペア練習をしていくようになってもらいたいと思っています。
さて、単語の練習の話をしましたが、それ以外の学びも全く同じことが言えるのではないでしょうか。聞くことや読むことのインプットをベースにコミュニケーションをメインに学んでいく方法、シャドーイングをメインにする、文法積み上げ式をメインに持ってくるなど、もちろん授業の中ではある程度ゴールを設定するので同じところに到着するように促した方がいいと思いますが(そもそも同じゴールを目指すべきなのかという話もありますが)過程は一つである必要はありません。私が目指しているのはそういう授業で、そのような授業をICTの力を借りることなしにするのは私には無理です。
ICTを利用することなしに、授業でいろんな種類の学びかたを提供するのは難しい
無理だと思うのはふたつ理由があって、一つは製作する時間的余裕、ふたつ目は整理する手間と場所です。ICTを利用すれば、他の素晴らしい先生がシェアしてくださったものを利用できます。もちろん様々なサービスを利用することで、教材を作成するのも簡単になります。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるっていうじゃないですか。
それから紙の絵カードや単語カードなどを利用していた先生でしたら、ご理解いただけると思うんですが、紙や物だと整理が大変で場所をとりますよね。場合によっては無くしたり破れたりもしてしまいます。ICTならLMSにリンクを貼っておけば生徒はそこから選んでいくだけ、無くなりませんし、そもそも整理する必要もありません。もちろん、何かを手に触りながら学びたい生徒のためのものも準備はしていますが。
いろんな種類の生徒がいる教室で、一つの学びかたで皆が同じように上達できるとは考えていません。(1)そして生徒が何かを学習する際の選択肢を産むことができるというのがICTの大きな役目だと考えています。
(1)大学の選択科目みたいに学生は先生の名前を見て選ぶシステムであれば、1つの方法を突き詰めていって良いかもしれません。でも、どんな学生が集まるかわからないような状況ではどうなのでしょうか。
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