今回は日本国内でいろどりを使用している学校があるということで授業を見学する機会をいただけました。それに関するツイートがこちらです。
今回の見学は単純に授業のやり方を学ばせてもらうだけでなく、自分の持っていた固定概念のアップデートや普段の自分の授業を振り返ることができ、授業を見学させて下さった内田さんには感謝しかありません。本当にありがとうございます。ちゃっかりたくさんのことを学ばせていただいたのだから、それを一人で抱えているのはちょっとひどいということで、内田さんと同行した自称助手に承諾をとって、授業参観しながらメモしたことを整理したいと思います。
授業でのスマートフォン活用とその効果
授業の際、教科書を印刷して配布せず、すべてスマートフォンで見せるという方法を使っていました。ノートを取る部分では、学習者は自分のノートを使用していました。この方法によって、スマートフォンで教科書以外のものを表示させることなく活用できるという点で、非常に良い方法の一つだと感じました。
パソコンやタブレットの場合、他の情報も画面に表示されてしまうため気が散りやすいのですが、スマートフォンではその心配が少ないと感じました。
もちろん、スマートフォンには画面が小さいという問題や、LINEなどの通知音が鳴ってしまう学習者がいたことなどの課題もないわけではないとは思います。ただ授業全体としては集中力が大きく途切れることなく進められており、大きな問題にはなっていないように思いました。
授業全体の印象と教え方
授業の雰囲気はとてもアットホームで、発言や質問がしやすいという印象を受けました。進め方については、文型の説明はあっさりと済ませる一方で、会話練習は一項目ずつ非常に丁寧に進めている様子が印象的でした。
私は、文型を積み上げる形式の授業から現在のスタイルに移行する過程で、週1回や週2回の授業では丁寧に進めすぎると学習の進度が遅くなり、学習者が飽きてしまうことがあると感じていたため、授業ではテンポの良さを意識していました。
しかし、毎日授業が行われるような日本語学校のような環境であれば、『いろどり』や『まるごと』のような教材を使い、丁寧に進める授業でも良いのではないかという印象を受けました。そのような授業は、学習者にとって安心感があり、大きな負担になっていない様子が見て取れました。
学生の主体性と雰囲気づくり
授業の中では、学習者に選択させる場面が多く見られ、それが学習者のモチベーションの向上につながっていると感じました。自分のレベルに合わせて選択肢を選ぶ学習者や、周囲の様子を見てチャレンジしようとする学習者の姿も見られました。
選択肢を与えることで楽をしようとする学習者がまったくいなかったという点からも、クラス全体の雰囲気づくりがとても良好であると感じました。
音声指導と発音の印象
音声指導については、非常によくできていると感じました。授業を受けていた学習者の中には、ネパールやベトナムから来た学習者がいました。日本での学習を始めてまだ3か月ほどの段階でしたので、イントネーションについてはこれからさらに上達していくのではないかと感じましたが、一つ一つの発音やアクセントについては、以前ほかの場所で出会った同国出身の学習者と比べても、よくできていたように思います。
これは、『いろどり』での学習過程において、音声を聞く量が多いという教材の特性が影響しているのかもしれません。ただし、その点についてはまだ確信が持てていません。
明示的説明の必要性についての考察
もともと自国で伝統的な教育を受けてきた学習者にとっては、明示的な説明が多い授業のほうが安心できると話す先生もおられ、私自身もその意見に一理あると感じたことがあります。
ただし、今回の授業はそのようなスタイルではなく、明示的な説明はほとんどありませんでしたが、学習者たちからはあまり不安を感じられず、積極的に発話にチャレンジしており、授業後に学習者と話した際にも、学んだことを使ってみようという意欲が強く感じられたのがとても印象的でした。
先生に質問したところ、やはり明示的な説明を求める学習者も一定数いるそうですが、「話すというゴールに辿り着くためには必ずしもたくさんの明示的な説明は必要ないのでは」と伝えると、多くの学習者が納得するそうです。
また、同行していた「自分は助手だ」と言い張っていた声と態度の大きな先生は、「そんなものは本で見せてしまえばいい。私は音声を含めた語彙と文法の説明は学期始めに全部LMSにアップして、学生は授業前に自分でチェックするようにしている」と話していました。確かに、不安な部分についてはプリントなどで渡し、それでも分からなければ先生に質問すればよいので、授業中にすべてを説明する必要はないという点には私も同意です。
逆に言えば、明示的な説明が多い授業は学習者にとって安心感を与えるかもしれませんが、それが効率的な学習や良い学習につながるかどうかは別の問題なのではないかと感じました。また、学習者がもともとどのような教育を受けていたかにかかわらず、学習スタイルの修正は可能なのではないかと改めて感じました。
コミュニケーションへの意識
細かい点ではありますが、学習者からは「相手としっかりコミュニケーションを取ろう」という意思が強く感じられました。もちろん、会話練習や会話発表の際に、スマートフォンを見てしまう場面もありましたが、それでも最後には相手の顔をしっかり見て会話をしており、好印象を受けました。
これは、おそらく先生が日頃からそのように指導しているからだと思います。学習者たちも、相手と話すため、他者とコミュニケーションを取るために練習しているという意識がしっかりと根付いているように感じました。
最後に
これら各項目を実践している先生も多いでしょうが、一つ一つ丁寧に行なっているのが本当にすごいと思いました。それも、学習者に選択させたり、流れで生まれた会話なども拾っていくという自由度を持っていながらです。正直本当によく考えて授業を作っているなとも思いましたし、文型積み上げ式の授業の丁寧さを残しつつ、必要のない部分を横に置き、Can-doによる授業を組み立てている様子には非常に好感を持ちました。国内で教えるの国外で教えるのは違うところも多いですが、いいところはぜひ自分の授業に取り入れさせてもらおうと思います。


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